2011年12月23日金曜日


サイレンが右から左へ音階を変えながら走って行く。

わざわざ遠回りをしたのはあまり帰りたくなかったからだ。

サンタの格好をした女たちは胸を揺らし

男たちの心を揺らしていた。

大人たちは脳裏にチラつく残像をかき消すように

大きな声でふーとかいえーとか言っている。

雪の降らない街ではサンタもソリを滑らすことができないのに。






あすなろの話。

あすなろは漢字で翌檜と書くらしい。

翌檜は檜に似た木だが、檜のように背は高くなれず、

あすは檜になろう、あすは檜になろう。

と念願しついには檜になれないのだ。

美しいともとれ、悲しいともとれる話。



あすは檜になろう、

そう願うは容易い。

私はいつまで私なんだろう。

いつまでも私は私でしかないのなら

いっそのこと諦めるんだ。


あすなろという固有

私という固有

まずは認めよ。



やれ、今日も取留めなく巡る思考。

布団の中は静か過ぎて

脳みその細胞がぷすぷすと破壊されていく音が聞こえる。

どこかで根を生やすあすなろよ、今夜はおやすみなさい。

明日はその枝が天に届くだろう。