2012年4月30日月曜日



夕日のなかを走る電車にゆられて
昔外国の映画に使われていた音楽を聴きながら窓側に立つ。

次から次へと目に飛び込んでくるのは
懐かしい建物や公園、友人の家、
次々と増える目新しい家々。

変わらないものと変わったものが入り交じり
帰る場所という言葉がなんとなく
居心地悪く思える。


大事なものはすっかり置いてきぼりで
空っぽの身体だと知っていて
ねじを巻いては無理矢理に歩かせようと努めた。

地元へ私を運ぶ電車
私を追い越す低いエンジン音
レンズに入ったままの砂
デスクに貼られたままの鳥の絵
イヤフォンから流れる音楽
兄と甥っ子の後ろ姿
弦の切れたギター
右耳のピアス
親指のしるし
真夜中のコンビニ
伸ばしたままの長い髪
湯船についた垢
いっぱいになったままの灰皿
二つの茶碗
壊れたままのキーホルダー

もしもと思えばまた傷つくだろう。
でも今日までもしもと思い続けてしまった。