2012年5月22日火曜日



地球に大きな月の影が落ちていた頃

皆は空に浮かぶ黒い月を眺めていた。



太陽に導かれ、いつもの場所から離れ、

ゆらゆらと風に揺られた。



どの道を選んでも結局たどり着くあの場所は


昔は容易く足を運んでは、息をつき、


身を委ね、身体を休めては、心を潤していた。


今、そこへ行こうにも、


立ち入り禁止の看板の前で呆然と立ち尽くすしかなく、


その先にある、あの場所に変わりがないかと、


つま先立ちをし、首を伸ばし、目を凝らしては、


時に蚊の鳴くような声で尋ねるのだ。


「お変わりありませんか」


わたしは、ここから、


たんぽぽの種をふっと吹きますから


時間がかかってもいいです。


どうかあの場所で豊かな花を咲かせて下さい。



皆がか細くもまぶしい太陽を眺めている間、

願い事をすれば叶えば良いのにと

残像が残る目を凝らして

一秒ごとに形を変える太陽に

どうかお願いですと願い事をしていた。